天然皮革〜家具の素材

「皮」「革」「レザー」

一般的に、動物から剥いだままの生のカワの状態を「皮」といいます。
この「革」の毛を取り除いたり防腐処理をしたりして、鞄や靴など商品にできるよう加工したものを「革」といいます。少し、ややこしいですね。
また、「革」にするための「皮」「原皮」と呼びます。

天然の革に風合いを似せて造った人工の素材が合成皮革、または人工皮革です。天然の革に対して、合成皮革人工皮革を「レザー」と呼ぶ方も多いですが、必ずしもそうとは限らないので注意しましょう。

牛革

牛革は最も多く使用されています。輸入原皮と国産原皮を使用していますが、現在では大半が輸入原皮となっています。

国内産の成牛革は地生(じなま)と言います。生皮のままで取引されるところから地生と呼ばれるそうです。輸入のものに比べ小さいサイズです。しかし傷が少なく、きめが細かく、また生産量も少ないため比較的高く評価されます。

表面に加工を施すことにより、オストリッチ・ワニ・ヘビなどの模造をすることも可能です。牛革は、その性別、年齢によりカーフ・キップ・カウ・ステア・ブルというように区別されています。(下表参照)

生後6ヶ月以内の仔牛からとったカーフが品質としては最上級。最も一般的に使用されているのはステアです。

また、一般に25ポンド(*1)以上ある厚く重い皮をハイド-Hide-(成牛・馬・水牛など)、 仔牛皮のように薄くて小さい軽い皮をスキン-Skin-(仔牛・山羊・羊・豚など小動物)と呼びます。

(*1)1ポンドは約454グラム。25ポンドは約11.34グラム。

カーフスキン
-CALFSKIN-
生後6ヶ月以内の仔牛の皮をなめしたもので、牛革の中で最上質。薄く・軽く・きめ細かく・柔らかく、見た目の風合いもしなやかで、美しさでは群をぬいている。
キップスキン
-KIPSKIN-
生後6ヶ月〜2年くらいの牛革。雌雄に関係なくキップと呼ぶ。カーフの次に上質。カーフに比べ肉厚・強度も増すが、きめは粗くなるのが特徴。
カウ・ハイド
-COW HIDE-
出産を経験した生後約2年の牝牛の皮。厚くて丈夫なのが特徴。表面のきめの細かさはキップに比べて劣るが、他の成牛より細かいとされている。さらに、傷が比較的少ないという特徴を持っている。
ステア・ハイド
-STEER HIDE-
生後3〜6ヶ月の間に去勢した、生後2年以上経った牡牛の革。平均した厚さを持ち、強くて丈夫。さらに、去勢しているので、柔らかくソフトな手触りのため、最も多くつかわれている。
ブル・ハイド
-BULL HIDE
生後3年以上経った去勢していない牡牛の革。傷が多く、きめは粗いが肉厚で丈夫。

牛革以外の革

牛皮以外の皮革としては、羊、山羊、馬、豚等の哺乳類のほか、ワニ、トカゲ等の爬虫類があります。
それぞれに長所短所があり、革の風合いも違うので用途によって使い分けられています。
さまざまな革の種類と特徴は別表「牛皮以外の革」をご覧下さい。

牛革以外の革

牛革以外の革の種類

馬 ホース 大判で、薄く、柔軟性があるが、牛革に比べ厚みや強靭性で劣る。毛足が短く、また動きが激しいため傷が多い。繊維構造は緻密で、きめ細かい銀面層を持ち、表面に独特の光沢がある。 インテリア用品、レザーウェア
コードバン 馬のお尻の部分をタンニン鞣して染色した革。褐色の光沢がある。繊維が緻密なので重く丈夫で長持ちする。スペインのコルドバ地方で開発されたことからこう呼ばれる。また貝の形に似ていることからシェルとも呼ばれる。 靴甲革、ランドセル等
豚 ピッグ 摩擦に強いブタの皮。軽量で耐久性があり、通気性にも優れる。表面には3つずつの毛穴が開いているのが特徴。わが国唯一の国産原皮で、原皮や製品皮として大量に輸出されている。牛皮に次いで利用範囲も広く、鞄、袋物、ベルトをはじめ、靴の表革や敷革に利用される。近年、その鞣製技術は著しく向上し、靴甲革などの素材としても利用されています。ペッカリー(野豚)は柔かく珍しい高級革。 靴甲革、鞄等
ペッカリー 中南米諸国原産の野豚の革。柔らかく丈夫で、希少価値がある。 中南米諸国原産の野豚の革。柔らかく丈夫で、希少価値がある。
山羊 ゴート 羊の革より硬い山羊の皮で、丈夫で柔らかく感触がソフト。毛穴の形に特長があり、ごつごつした表面を持つ。子ヤギの皮はキッドスキンと呼ばれる。 靴甲革、鞄等
キッドスキン 仔山羊の皮。きめが細かくデリケート。 高級婦人靴、手袋
羊 シープ(ヤンピ) 薄く軽く柔らかいがやや銀面が弱い。防寒材料として優れており、主に手袋やロングブーツなどに使用される。また、品種の数が多く、品種によって羊皮の性状が異なる。ウール(巻縮している毛)を有するウールタイプ、ヘアー(真直な毛)を有するヘアータイプに区別される。インド産羊皮は上質で、衣料革や手袋、袋物などに利用される。山羊皮や羊皮は輸出用の国策から、ウェットブルーやクラストの半なめし、さらには製品皮の輸入が増えつつある。 手袋、ブーツ、ランチコート等
ラムスキン 仔羊の皮。丈夫さに欠けるが柔軟性は抜群。
鹿 ディア 銀面らしき表皮層がなく、柔らかくしなやかで、また丈夫でもある。小鹿の皮を油なめしで仕上げたものをセーム革といい、ガラス拭きやカメラ拭きとしても使われる。 手袋
カンガルー 薄くて丈夫でキメが細かくカーフよりも上質とされる。しなやかでよく伸びるが傷には弱い。 高級靴、バッグ等
チンギャーレ 丈夫で摩擦に強い上、軽くて通気性も良いイノシシ革。表面に小さな3つの毛穴があり独特の素材感。 鞄、財布等
シャーク 小型のよしきりザメの皮革。摩擦などに対しては強いが防水効果は特にない。 時計バンド等
ハラコ 牛の胎児の毛皮(漢字では腹子、英語では「Unborn Calf」)。 不幸にも母牛のお腹の中で死んでしまった胎児、このため数が少なく、原皮も小さいので高価。この代用品として用いられるポニーの毛皮(胎児ではない。)も便宜上ハラコと呼ばれることが多い。 靴、鞄等
爬虫類 ワニ革 凸凹模様が特徴の高級素材でクロコダイル種とアリゲーター種がある。最上級のクロコダイル(東南アジア産のイリエワニ)やアリゲーター、カイマンなどが有名。また、部位では、肚ワニ(はらわに)と言うワニの腹部が高級とされる。鱗の模様によって玉符(柔らかめ)と竹符(硬め)がある。 バッグ、ベルト、時計バンド等
トカゲ革 丸斑模様のリング、縞斑のオーバルなど様々なものがあり、ジャワのリザードが有名。また、リングマークトカゲ(リングトカゲ)が最も高級。 バッグ、靴甲革、時計バンド等
ヘビ革 美しい鱗が特徴だがあまり丈夫ではない。特ににしきヘビ(パイソン)が有名。 バッグ等


なめし

なめし」とは動物からはいだままの「皮」(輸入の原皮は塩漬けにされています)を鞄や靴など商品に使える「革」に加工することです。腐敗や乾燥を防ぎ、弾力性、柔軟性、たわみ性などをもたせ、長く使用できるように薬品で処理することをいいます。

天然の植物から抽出したタンニンを使ってなめす「タンニンなめし(渋なめし)」、塩基性クロム酸塩を用いる「クロムなめし」、複数のなめし剤を併用する「混合なめし(コンビなめし)」などがあります。 別表「なめし方による革の分類」をご覧下さい。

なめし方による革の分類

なめし方による革の分類

クロームなめし 合成剤(硫酸クロム、重クロム酸ナトリウム、カリウム塩、クローム塩など)を用いた科学的製法によるなめし方で、革製鞄では8割をしめる。 ソフトな風合いで表面に青みがかった深い光沢があり、柔軟性、伸縮性に富み、また、摩擦にも強く耐久性、耐水性がある。但し、水を吸収すると乾燥が遅い。靴甲革、ハンドバック、鞄、衣料、手袋、ベルト、運動用具、インテリア用など広範囲に利用される。
植物タンニンなめし (渋なめし) 天然の植物(木樹の渋抽出した天然剤)を利用した製法で、手間はかかるが より自然な風合いが楽しめ(使い込むほどに独特の色に変化)、使い込むほど柔らかくなる性質をもつ。濡れても乾燥がはやく、伸びと弾性が小さい。耐熱性に劣るが、摩滅に強く、成型性がよくなるため立体加工に適し、靴底革、馬具、鞄、ベルト、革工芸などに用いる。また、吸水性が良く染料に良く染まる。オーク、チェスナット等を使った植物なめし(Vegetable Tannage)の一種で鞣した革は黄褐色をしている。
混合(複合)なめし 2種類以上のなめし剤の特徴を生かし、用途毎になめしたもので、クロームなめしした後タンニンなめしをした、野球グローブ用のグローブレザーが一例。コンビなめしともいい、逆にタンニンなめし後、クロームなめしすることを逆コンビという。クロームとタンニンの長所を生かした革を作ることができる。
油なめし 動物の油脂で皮をなめす方法で、耐水性に強い。セーム革がこれにあたり洗濯も可能。
ホルマリンなめし ホルマリンを用いるなめしで、純白の革に仕上がる。


革の加工

革は、鞄・靴・手袋などからパンツ・スカート・ジャケット・コートなどの服飾、そして家具と、幅広く使われています。ファッション性や使い勝手などさまざまなニーズにこたえるため、革はそれぞれの特性とニーズに合った加工をされ、姿を変え、製品となって私たちの手元に届きます。

革の加工は大きく分けると、銀面(皮の表面)を生かした平たんな加工とブラッシングでケバ立たせる起毛加工とに分けられます。起毛にはスエード・ベロア・バックスキン・ヌバックなどがありますが、それぞれ使う革の種類や表面をケバ立たせるのか裏面をケバ立たせるのかなどによって区別されています。その他、型押しで表面に模様をつけたり、揉んでしわを強調したり、合成樹脂で光沢を出したり・・・さまざまな加工がなされています。
別表「加工方法による革の分類」をご覧下さい。

加工方法による革の分類

加工方法による革の分類

銀つき革 一般にスムースと呼ばれる、銀面(皮の表面)の自然な感じをそのまま活かした革のこと。 出来るだけ表面に傷の少ない原皮を使用して銀面の美しさを活かした非常に一般的な革です。ボックスカーフやアニリン革などが代表で、美しい銀面と優れた耐久力、艶のある快適な使用感より圧倒的な人気を得ている。厚い革を2枚か3枚にスライスした一番上の1枚目(表面の付いている部分)を銀付き革と言い、2枚目、3枚目をそれぞれ一番床革、二番床革と呼ぶ。
銀磨り革 (ぎんずりかく) 銀面をサンドペーパーですり取り、起毛させた革のことで、この作業を銀磨り起毛加工という。バックスキン、ヌバックがこの製法にあたる。
バックスキン 鹿革(BUCK)の総称で特に牡鹿の銀面(表面)をビロード状に起毛させたものをさす。今日では、同様の工程で起毛された牛革や羊革のナップド・レザーをさすこともある。
ヌバック 牛革の銀面(表面)を起毛させたベルベット状の革。バックスキンより目の細かいペーパーを使うため毛足が短く、防水性のオイルド・ヌバックがアウトドア・シューズ等に用いられる。NEO(新しい)バックが語源とされる。
スエード カーフ、キッド(仔山羊)、ピッグ(豚)など主に小動物の革の裏面をサンドペーパーでベルベット状に起毛した革で、毛足が短くソフトなものほど上質とされる。仏語のスウェーデンが名前の由来。
シルキー 仔牛の革でスエードと同じように作られるが、さらにソフトで最高級品。
ベロア 成牛革のように繊維組織が粗い皮の裏面を起毛させた革。ナップド・レザーとも呼ばれる。スエードよりも毛足が長く、デザート・ブーツやワラビー等に利用される。
ガラス張り革 クロムなめしした革を、ガラス板やホーロー板に張り付けて乾燥、銀面をサンドペーパーなどで磨き処理し、塗装仕上げした革。表面が均一で硬く、ツヤがあり、手入れが簡単です。タウンシューズ、学生靴、鞄などの革製品に使用されます。原料は主に成牛皮です。
揉み革 グレイン、スコッチ・グレイン・レザー(SCOTCH GRAIN)とも呼ばれ、鞣した後、揉んでしわ(しぼ)をつけた革。大鹿に似せた「エルク」の他に一方向へ流す「水しぼ」、二方向から揉む「角揉み」、多方向から揉む「八方揉み」等がある。
型押し革 エンボス加工とも呼ぶ。鞣した後、加熱高圧プレス機で銀面に模様や図柄などをプレスした革で、表面のしぼが特徴。当初は質の悪い革の銀面をきれいに見せる目的だったが、現在ではファッション的な用途が広がり高級な革にも応用されている。ワニやオーストリッチ、トカゲなど高級革に似せたものが多い。エンボス加工とも呼ぶ。鞣した後、加熱高圧プレス機で銀面に模様や図柄などをプレスした革で、表面のしぼが特徴。当初は質の悪い革の銀面をきれいに見せる目的だったが、現在ではファッション的な用途が広がり高級な革にも応用されている。ワニやオーストリッチ、トカゲなど高級革に似せたものが多い。
シュリンクレザー 宿革とも呼ぶ。鞣し工程中に特別な薬品を使って銀面を縮ませた革で、揉んだ革よりもしぼが強調されている。
ボーデッドレザー 表面に軽いしわ加工や型押しを行い、細かな線模様を入れた革。
モロッコ革 小石を敷いたような独特の模様の革で、山羊革をタンニン鞣したもの。
エナメル革 クローム鞣し後、銀面に合成樹脂(エナメル、ポリウレタン樹脂)を塗装してピカピカに光沢を出した革。日本の漆塗りをヒントに考案され、アメリカでパテントが取られたことからパテントレザーとも呼ばれる。汚れが付きにくく手入れも簡単だが寒さに弱くひび割れしやすい。靴甲革やハンドバックなどに利用される。
オイルドレザー 動物油(主に魚油)でなめした革で、オイルによるはっ水性により、水分による劣化が少なく、しっとりとした感触がある。独特の光沢、色むらと粗い表面が特徴。オイル・レザー、オイル・アップ・レザーとも呼ばれる。
ぬめ革 タンニン鞣ししただけの染色も塗装もされていない革で革そのものの味わいがある。使い込むことで飴色に変色し風合いが増す。
革メッシュ 紐状の革を編んでシート状にしたもので通気性に富んでいる。
セーム革 シャミ革、シャミー・レザーとも呼ぶ。仔鹿や羊などの革を油鞣しして、スエード状に仕上げた革。時計や貴金属を磨くのに利用される。柔らかく、しなやかで洗濯もできる。
底革 本底用に鞣した革で普通、成牛革をタンニン鞣ししている。厚いまま硬く仕上げている。丈夫で靴の底等に使用される。
床革 銀面をそいだ、残り部分を鞣した革で粗い。 樹脂塗料やエンボス加工を施して、あたかも銀付き革であるように見せかけ、鞄等に使用されることもある。ベルベット状の毛羽に仕上げたものを床スエード、それより毛羽の長いベロア状に仕上げたものを床ベロアと呼ぶ。


仕上げ方法による分類

革はデリケートで繊細な素材です。
革の風合いをできるだけ自然に近い形で楽しむために最小限の仕上げにすると、その分メンテナンスには気を使うようになります。しかし、天然の素材であることとそこから生まれる高級感や身体にしっくりなじむ感覚を考えれば、お手入れも楽しくなるでしょう。

革の表面の仕上げは、
『革本来の風合いを活かして染色だけを施す』
『塗装をして、手入れしやすく表面を均一にする』
に大きく分けられます。

染色だけで塗装をしない「素上げ」は、高級ですが汚れやすくメンテナンスが困難です。染色した上にわずかに透明な塗装をしたものを「アニリン仕上げ」、染色した上に少し顔料を塗ったものを「セミアニリン仕上げ」といい、家具用皮革として一般的なのはこの「セミアニリン」と、顔料で塗装した「顔料仕上げ」です。
別表「仕上げ方法による革の分類」をご覧下さい。

仕上げ方法による革の分類

仕上げ方法による革の分類

素上げ 素上げ革はナチュラルレザーとも呼ばれる。染色だけで表面塗装しない、皮革の味そのものを生かした仕上げ。高級タイプの仕上げだが、塗装がないため汚れ易く、メインテナンスに難点がある。
アニリン仕上げ 革本来の繊細な銀面模様の特徴を生かすよう、染色した上にわずかに透明な塗装をしたもの。表面がきめ細かでソフトな感触を保ち、より革らしい味を有す。素上げより用い易いが、それでもメインテナンスが困難。
セミアニリン仕上げ 染色をした上に、顔料を少し塗ったタイプ。家具用皮革として、安心して使用出来る物性を持った高級タイプです。
顔料仕上げ 顔料で厚化粧した塗装。銀面の傷をかくし均質な着色ができるため、最も一般的で物性面でも安心して使えるが、皮革本来の持ち味は損なわれる。但し現在は、表面風合いの非常に良いものがつくられるようになっている。グレージング仕上げと区別されるため塗装仕上げと呼ばれる。
グレージング仕上げ 革の銀面に平滑性と光沢を付与することを目的に、めのう、ガラス、金属ローラーによって強い圧力を加えながら摩擦する仕上げ。グレージングにしぼ付けを行なったのがボックス仕上げ。
アンチック仕上げ 不規則なむら模様など古代調の印象を与える色調の革。ツートン仕上げやアドバンチックなどがある。
メタリック仕上げ メタル調に仕上げた革。




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