灯りで和む

たまには照明を落としてランプの灯りで夜を過ごしてみる。
色とりどりのガラスを通したやさしい光は、空間に物語を運んでくる。

・・・なんて、ちょっと憧れませんか?

蛍光灯の灯りは団らんをもたらしてはくれますが、どこか無機質で無表情。
記念日のディナーやちょっと夜更かししたいとき、そんな特別なときは灯りもそれなりに演出したいものです。

そこで、様々なガラスを使ったランプをご紹介していきます。

灯りで和む

それぞれに趣のある幻想的なランプの電球を覆って光を拡散するのがランプシェード。ガラス、紙、布地などの多種多様な材料がありますが。今回はガラス製のシェードに注目していきます。同じガラスといえども製法が色々あって出来上がった製品は個性豊かです。そんなガラスシェードの魅力を伝えていきたいと思います。まずはガラスのオハナシから。

ガラスって何?

色とりどりのガラス製品にふれる前に、ガラスそのものについて話していきましょう。

ガラスを発見したのは商人?

今から4,000年ほど前。
「フェニキアの商人たちがイスラエルを流れる川のほとりで夕食のために焚き火をした。かまどにする石が無かったので積荷の天然ソーダの塊をつかったところ、焚き火の熱で砂とソーダ灰が溶け合いガラスが流れ出した。」
これがガラスの発見だとされています。
ガラスの原料は珪砂(けいしゃ)にソーダ灰・石灰・石炭・鉛・アルミナなどを加えたもの。地球上にあるほとんどの砂や土は珪砂を多く含んでいるので、きれいかどうかは別にしてガラスになり得るのだそうです。

ガラスは燃えない?

ガラスは熱を加えると溶けます。溶けたガラスを様々な形に冷やし固めることによってガラス製品が生まれます。色は原料に鉱物を混ぜ発色させます。ガラスは透明で光を通す珍しい固体です。
硬く、表面はなめらかで均一。熱を通しにくく薬品にも強い。ですが強い衝撃には弱く、割れやすい性質を持っています。
ダイヤモンドや水晶でしか傷をつけられない物質でありながら、割れるときは一瞬で粉々になってしまう。そんな強さとはかなさをあわせもつ姿が、ガラスに神秘性を持たせるのでしょうか。

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ガラス製のランプシェードの種類

Stained glass(ステンドグラス)

ステンドグラスは「色付けしたガラス」という意味で、ヨーロッパの教会の窓にはまっている緻密な絵付けを施したガラスが始まりとされています。現存する世界最古のステンドグラスはキリストの頭部や聖人の顔が描かれ、9〜11世紀ごろの物だといわれています。その頃には絵付けしたガラスピースを鉛の桟にはめ込んで結合する技術も確立されていたようです。
ステンドグラスを通した荘厳な光は文盲の人たちの信仰を深めるのに役立ち、教会に無くてはならないものになっていきますが、16世紀には宗教革命の影響で衰退。19世紀になって古い芸術を見直す動きやティファニー、ガレなどの活躍によって再び復興します。今では一般建築やインテリア、小物など幅広く使われ、私たちにも身近なガラスです。

Fusing (フュージング)

ガラスフュージング(ガラス胎七宝)はガラスの「融合」です。
色ガラスをモザイク状に並べたり、重ね合わせたりして電気炉で加熱、溶かし合わせます。専用のアートボックス(超小型の窯)を使えば家庭の電子レンジでも作品作りが出来、気軽に趣味としても楽しめます。
フュージングで作ったガラス作品をステンドグラスにしたり、砂のようにこまかく砕いた色ガラスを使って砂絵を描くようなフュージングしたり(パウダーフュージング)、創作の世界を広げる技法です。

Sandblasting(サンドブラスト)

酸などでガラスの表面を溶かしスリガラス状にすることで文様を描いていく手法をエッチングといいます。サンドブラストもその一種です。サンドブラストは金剛砂などのこまかい粒子を圧縮空気によってガラス表面に吹き付け、微細な傷をつけて文様を描きます。
マスキングを幾重にも重ねることで様々な文様を掘り出すことができ、空気の圧力や粒子の大きさ、吹き付け時間を変えることで微妙で繊細な模様を描くこともできます。金剛砂の代わりにプラスチックや水と氷の粒などを使う場合もあるようです。
美しく絵画的で、灯りにも物語が生まれるような素敵な世界が込められたガラスです。

Mosaic(モザイク)

色とりどりのガラスが散りばめられたモザイクガラスは、明かりを灯すと角度によってその表情を変えます。カットガラスや玉ガラスを一つ一つ丁寧に組み合わせた手作りだからこそ、一つ一つ表情の違うランプが出来上がるのです。飾る場所を選ばないのに、明かりを灯すと一瞬でその場の主役になってしまう。個性的なランプです。

その他のガラスの加工技術

切子

回転砥石などで削りながら多彩な幾何学模様を削り出しする技法。江戸切子や薩摩切子が有名。

パート・ド・ヴェール

ガラスを粉末にして、特別ののりを混ぜてパテ状にしたものを素材として作り上げるもの。起源は古代メソポタミアにまでさかのぼるが、それぞれのガラス作家が秘伝としてきたため、幻の技法とされている。

エナメル彩色

古代ローマ時代に始まる。低音で溶ける色ガラスの粉末でガラス表面に絵付けをし、低温で焼き上げる。

インテリアに“ランプの灯り”を取り入れる

色とりどりのガラスのランプは、スイッチを入れるだけで部屋の雰囲気を変えることができ、またそれ自体がインテリアになります。

玄関に

帰ってきて鍵を置きっぱなしにしてしまったり、靴が散乱してたり、靴べらが落ちてたり、たたんでない傘がそのまま置いてあったりと、玄関って結構物が多い場所です。ちょっとがんばって「靴箱の上には何も置かない!」と決めて、素敵なランプ一つだけ置いてみましょう。絵と組み合わせたり花瓶と組み合わせたりしてみるのも楽しいです。そして絶対に他に何も置かない!はんこも靴箱の中!これでいつ誰が来てもいいぬくもりのある玄関の出来上がりです。

和室に

和室にはやっぱり和紙や木の和風照明がしっくりきますが、例えばアンティーク風のステンドグラスのペンダント照明をかけても意外と合うものです。色味を抑えてシックな雰囲気にすれば、コダワリの和室を演出できます。

ダイニングに

たまにはダイニングの照明を消して、ランプの灯で食事をとってみませんか?ひと続きのリビングダイニングならリビングの照明をつけておけば明るさは確保できるはず。テレビも消して、ランプの灯りを楽しみながらの家族団らん。いつもの夕食がきっとプレミアムな夜になるでしょう。

リビングに

お客様を迎えるパブリックスペースであり、家族がくつろぐ場所でもあるリビング。ランプもいろいろな楽しみ方ができます。

  • ・一対のフロアスタンドをソファの両側に置いてみる。
  • ・あるいは壁に飾った絵をはさむように置いてみる。
  • ・お気に入りの絵を壁に立てかけてそれを照らすようにランプを置いてみる。
  • ・キュリオケース(飾り棚)やカップボード(食器棚)の中に飾って灯してみる。
  • ・グリーンやオブジェとあわせて置いてみる。
  • ・あえて本体を隠し、灯りだけを楽しんでみる・・・

自分が一番落ち着く場所に座ったときに、何気なく目がいく場所に置いてみると、リラックス効果は抜群だと思います。

ガラスランプのお手入れ

照明器具のお手入れと同様です。

  • ・中性洗剤でやさしく洗い、しっかり水洗いしてよく乾燥させます。
  • ・化学雑巾はくもりの原因になるので使わないでください。
  • ・くもりガラスを使ったものは、指紋が残らないようゴム手袋を使うなどしてください。

ランプの光で生活を灯しましょう

皆さんはお部屋でどんな時間を過ごしていますか?読書したり映画をみたり、音楽を聴いたり、お酒を飲んだり。でも何か物足りない、もっと気分を和ませたい。そんなことを考えたことはありませんか?
そんな時にはこだわりのランプを灯して、温かみのある明かりが非日常の雰囲気を醸し出します。きっとリラックスしてその世界観に没頭できることでしょう。皆さんもランプある生活を楽しんでください。


(2002年9月作成)


本文中に使用している家具・インテリアの写真はイメージです。当社にてお取扱いのない商品が含まれる場合がございます。また、掲載しました情報はコラム作成当時のものとなりますので予めご了承ください。

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