安眠模索

睡眠を8時間とすると一日の3分の1。人生80年として睡眠時間の合計は233.600時間!・・・およそ27年間は寝ていることになります。
それは決して非活動的な時間ではなく、体と脳を休めて翌日のエネルギーを蓄え、皮膚の新陳代謝を促して美肌をつくり、脳の記憶力をよくするなど、人間の活動に欠かせない大切な時間です。
快適な眠りが得られないと、心と身体に悪影響を及ぼしかねませんし、第一一日の3分の1もの時間を無駄に過ごすことにもなってしまいます。

マットレス選びは人生のパートナー選び!

「寝心地」は一人一人千差万別。マットレス選びは実際に寝転んで自分に合うものをお選びいただくのが一番ですが、その前にちょっとだけお役に立つ情報をお届けします。

各部名称

身体を支えるマットレスの構造

硬いベッドがいいベッドか!?
・・・硬すぎず、やわらかすぎず、いい寝姿勢=立っているときのままの姿勢を保てるのがいいベッドです。
硬い床に寝転んでみるとよくわかります。
お尻や肩など出っ張った部分はほかの部分より強い圧力がかかり、そのままでは局部的にしびれて、体全体が疲れてしまいます。そうならないように、寝ている間に自然と体の向きを変える。・・・硬すぎるベッドに寝ると寝返りが増えてしまいます。
やわらかすぎるベッドでは、逆に体が沈み込みすぎて不自然な寝姿勢になってしまいます。「よっこらしょ」と体の向きを変えようにも、余計な筋力が必要になりかえって疲れる結果に。

よいマットレスの条件、第一は「体のでこぼこや重みをしっかり受け止め、体圧を分散し、自然な寝姿勢を保てること」です。

スプリングのマットレス

ベッドが使われ始めたのはB.C.3200年ごろのエジプト。まだマットレスの形態はなく、動物の革やたたんだ衣類などをマットレス代わりに用いていました。その後、藁や羽毛を袋状にしたマットレスが使われ、18世紀には現在のものに近い形で鳥の羽や獣の毛が詰められたコンパクトなマットレスが登場します。
スプリングの登場は1920年。以後どんどん改良が加えられ今日に至っています。

代表的なスプリングマットレスは「ボンネルスプリング」「ポケットコイル」「高密度連続スプリング」の3つです。

ポケットコイルイメージ1

ボンネルスプリング

中央部がくびれた(つづみ型と呼びます)らせん状に巻いたスプリングを横に連結したもので、芯は硬く、表面は適度なクッション性を保っています。

ボンネルコイル

ポケットコイル

小さな袋にひとつひとつスプリングを包んで敷き詰めたマットレス。体圧をその場で吸収し、横揺れや振動が全体に伝わりません。

ポケットコイルイメージ2

高密度連続スプリング

1本の鋼鉄を高密度で編み上げたもの。スプリングの密度はボンネルの2.5倍と言われ、より多くの面で身体を支えるのでマットレス全体が均一の反発力を持っています。

高密度連続スプリング

シングルクッションとダブルクッション

ダブルクッションイメージ1

マットレスを硬いベッドフレームで支えるのに対し、マットレスをさらにクッション性のあるスプリングボトムで支えるのがダブルクッションと呼ばれる構造です。
上部のマットレスが正しい寝姿をキープ。下部のスプリングが荷重を分散し、上下のマットレスの相乗効果で上質な寝心地を実現します。
ホテルのベッドのほとんどはダブルクッションです。

ダブルクッションイメージ2

スラットベース

スラットベースイメージ1

ヨーロッパで広く普及しているボトム構造です。
ブナなどの薄板をアーチ状に何層も重ねた小幅材をフレームに固定したもの。
アーチ状に反りをもたせたベースが、荷重を吸収しながらマットレスを支えます。
マットレスが身体を支え、スラットベースが全体の荷重を吸収分散する・・・このダブルクッション効果で、理想に近い体圧分布を実現します。
またすのこ状の構造は、マットレスの通気性能を妨げることもなく、湿気の多い日本にも適しています。

スラットベースイメージ2

ウォーターベッドとジェルベッド

ウォーターベッド

ウォーターベッドは、スプリングのマットレスの代わりに、水の入ったウォーターバッグで体を支えます。ウォーターベッドイメージ水の浮力が体圧を分散し、骨格を正常な状態に保ったまま自然な寝姿勢を保てます。腰痛がやわらぐともいわれています。
ヒーター付きで、冬は横になった瞬間から快適な温度に包まれるのも魅力のひとつです。

ウォーターベッドイメージ

メンテナンスは年に一回防腐剤を入れるだけ。水の入れ替えの必要はありません。
水量の多いタイプ、少ないタイプがあり、またバッグに入れる水の量を調節することも可能なので自分にあった硬さを選べます。また水筒型のシリンダーバッグをマットレスの中に並べたタイプもあり、これは分解することで移動も可能です。

ジェルの場合 硬めの場合

ジェルベッドは、水ではなくゼリー状のジェルを利用したベッド。ウォーターベッドよりもやや硬めで、寝返り時の揺れや水音が解消されています。
ウォーター同様ヒーター付きで冬も快適。
防腐剤を入れる必要はなく、メンテナンスも簡単です。

ジェルイメージ

低反発フォームマットレス

低反発フォームはNASAで考案された衝撃吸収素材です。
軟質ウレタンフォームの一種。軟質ウレタンフォームはバネのような「弾性」と粘土やガムのような「粘性」を併せ持つ「粘弾性体」で、その「弾性」を抑え、「粘性」を上げたのが低反発フォームです。
体を横たえると、体の重みと体温に反応してゆっくり、体を包み込むように沈みます。優れた低反発効果が抜群のフィット感を生み出すのです。
そのフィット感は毛細血管を圧迫せず、寝返りも減り、安定した睡眠を保ちます。
床ずれ防止に効果があり、医療の現場でも用いられています。

低反発イメージ

マットレスの選び方とお手入れ

人生の3分の1を過ごすベッドですから、自分にあったものを選びたいし、長く上手に使いたいもの。慎重に選んで、大切に使ってあげてください。

マットレスの選び方

まず手で押さえてみて、全体に張りがあること。そこだけ深く沈みこんでしまったりスプリングの存在を感じたりしないものを選びましょう。

次に腰掛けてみて、大きく沈み込んだり不安定にゆれたりしないかチェック。

そして実際に寝てみましょう。
硬すぎて背骨が反ってしまわないか。
逆にやわらかすぎて腰や体全体が深く沈み込み過ぎないか。
立っているときと同じような姿勢を保てるのがベストです。
もちろん「ちょっと硬めがいい」「フカフカしたほうがいい」などお好みで選んでください。

寝返りも打ってみましょう。きしむ音がしたり揺れが続いたりしないか、寝返りは打ちやすいかチェックします。

ソファに「腰掛ける」のに比べると、家具売り場で「寝ころぶ」というのはちょっと抵抗があるかもしれません。人の目が気になるようなら、比較的すいている平日にお出かけになってみてください。

常に清潔に保つ

マットレスを清潔に保ち、寝心地をよくするために、ベッドパッドはできるだけ使うようにしてください。そしてパッドやシーツをまめに洗濯すること。
マットレス自体も、時々立てかけて風を通してあげると、清潔さを保てます。立てかける際は、無理に折り曲げたりしないように気をつけてください。

3×4でちょうど1年

モノはよく使う部分が早く痛みます。
マットレスも同じ。体圧が余計にかかる胸やお尻の部分は、ほかの部分より早くへたってしまいます。そのまま使い続けるとマットレスの寿命も短くなるし、寝姿勢にも悪影響を及ぼします。
そうならないためには、マットレスの上下裏表を均等に使ってあげることです。
低反発マットレス以外、ほとんどのマットレスは左右対称で裏表もありません。なので、「天地を置き換える」→「裏返しにする」→「天地を置き換える」→「裏返しにする」このローテーションを三ヶ月ごとに繰り返してください。シーズンごとに使う面を入れ替えて、ちょうど1年で一周。
そうすることでマットレスのへたり具合を均等化させ、長持ちさせることができます。


(2003年7月作成)


本文中に使用している家具・インテリアの写真はイメージです。当社にてお取扱いのない商品が含まれる場合がございます。また、掲載しました情報はコラム作成当時のものとなりますので予めご了承ください。

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