涼しさを呼ぶ日本の暮らし

日本の家は夏仕様

‘伝統的な日本の家屋’というと、どんな家を思い浮かべますか?
藁葺き屋根、大黒柱、床の間、障子・ふすま、畳、縁側、軒、土間、土壁・・・

日本の夏は高温多湿。
エアコンなど無い時代のこと・・・冬の寒さは囲炉裏の火を囲めばなんとかしのげますが、じめじめした暑さは耐えがたいものがあります。だからでしょうか、日本の家は夏を涼しく快適に過ごす造りになっています。

南北に大きく開いた間口。建て並べた柱を梁でつなぎ、壁を最小限にした構造。細かく仕切ることも、全て開放することも出来る障子。これが家の中に自然の風を呼び込みます。
湿気をためないよう、床下も高くして風を通しています。
縁側の長いひさしが直射日光をカット。さらにすだれやよしずを使うことで、‘風は通すけど日光は遮る’という心地よい日陰を作ることができます。
縁側は内と外との中間的な役割を果たす場所。自然から身を守るという閉鎖的な考えではなく、自然と共存し、自然を取り入れて快適に過ごす開放的な家が、日本の家です。

自然と共存する日本の家

ただ冬の寒さにはめっぽう弱いのが難点です。通気性がいい反面断熱性に乏しく、部屋全体を暖めることができません。そこで、最も効率が良い「こたつ」を囲んで一家団らんという図が風物詩になっていきます

ポイントは自然の風を呼び込むこと。

陽射しを遮って、かつ風の通り道を作った家。自然とのつながりを保った開放的な造りの家。・・・打ち水や風鈴なども風を利用して涼しさを呼び込む工夫です。

木と紙と土と草と・・・

昔、「日本の家は木と紙で出来ている」・・・と驚いた外国人がいたという。

欧米の家は石造りが基本です。寒さの厳しい欧米では断熱性の良い石造りの家が適しており、窓も小さく作られました。閉鎖的な構造には、プライバシーを重んじるという意味合いもあるのかもしれません。

地震の多い日本には、硬い石よりも柔軟な木の家のほうが適しています。もし災害で壊されてもすぐに再建できるという利点もあります。

自然の素材は呼吸しています

そしてなんと言っても湿度!
からりと晴れた暑さなら日陰に入ればしのげますが、湿度の高い日本ではそれを調節する必要があります。
木造建築の木も、障子やふすまの紙も、土壁の土も、畳のい草も、湿度を調整する機能を持った天然の素材。湿度に応じて「呼吸」する、日本の気候にあった素材なんです。

もちろん、木製家具も呼吸しています。
最も顕著なのが桐箪笥の調湿機能。湿度が高くなると湿気を吸って膨張し、隙間をふさいで中の衣類を守ります。乾燥してくると、湿気を放出し隙間を作って風を通すのです。

ちなみに、
家具は時々風通ししてください。天気の良い日に扉や引出しを開けて、できれば中身も出します。
開きづらくなった引出しは、風通しの良い日陰で風に当てると元通りになります。それでもダメなら、ドライヤーの冷風を側面にあててみて下さい。約30cm離し、間違って熱風をあてないこと。

涼しく過ごす工夫

水をまいた後の庭の心地よさ、縁側でひんやりとした風に身を任せる心地よさをご記憶の方も多いでしょう。実体験が無くても、感覚的に「なんとなくわかる!」気がしませんか?

「みんなでいっせいに打ち水して、真夏の気温を2℃下げよう!」という「打ち水大作戦」が行われています。打ち水はほこりを抑える効果があり、まいた水が蒸発するときに熱を奪うため、わずかに気温を下げるのです。また打ち水には「場を清める」という意味もあり、昔は来客への心遣いとして玄関に打ち水をしていました。

この夏はエアコンに頼らない生活を。

お金を使わなくても、エアコンのスイッチを入れなくても、涼しさを呼ぶ工夫は出来ます。

窓を開けるときは、必ず2箇所以上開けて風の通り道を作ること。
南北に開口部を取り障害物をなくすと、家全体に風が通りとても快適。
出かけるときも、家の中のドアや間仕切りを開け放しておくと湿気対策になります。
扇風機やファンで上下の空気の入れ替えをしてあげるのも快適に過ごす工夫です。

・すだれやよしずは陽射しを遮り風を通す機能だけでなく、見た目にも涼しげです。
・風鈴は聴覚に訴える夏の風物詩。騒音にならないよう、風の強いときにははずす配慮をお忘れなく。
・畳やい草ラグのひんやりとした感触もさわやかで気持ちのよいものです。麻や木綿、籐や竹など自然の素材をうまく取り入れてみましょう。
・観葉植物の緑や海をイメージさせる青をインテリアに取り入れるのも、視覚から涼しさを呼びます。
・風上にハーブなどを植えれば、爽やかな香りが家中に広がります。
・川のせせらぎの音も涼やかでよいですが、家の中に流れを作ることは出来ない。ならば、ガラスの器に水を張ってはっぱやお花を浮かべたり、水槽に金魚を飼ってみたりしてはいかがでしょう?
・夜、保冷剤を首の後に当てて眠るととても気持ちがいいです。水やお茶を凍らせたペットボトルを用意しておけば、のども潤せて一石二鳥。
・凍らせたペットボトルは、いちいち冷蔵庫を開けなくてもいつでも冷たい飲み物が飲めるので、日中も大活躍です。

ちょっとした工夫で、暑い夏も楽しく涼しく過ごすことができるかもしれません。 何事も無理は禁物です。楽しくできる範囲で、「エアコンの無い生活」を目指してみませんか?

正しい打ち水のやり方

朝夕の涼しい時間にまきましょう

日中の熱くなった路面にまくと、すぐに蒸発し、かえって蒸し暑くなってしまいます。

残り水を使いましょう

水道水は使わず、お風呂の残り水や雨水などを利用しましょう。洗剤成分が含まれる生活廃水は、路面が滑りやすくなったり環境を汚染したりしますので、きれいな水を使うこと。

周りに配慮してまきましょう

人や車に水をかけないように。ぬれると滑りやすくなるマンホールなどにはまかないように注意しましょう。


(2007年7月作成)


本文中に使用している家具・インテリアの写真はイメージです。当社にてお取扱いのない商品が含まれる場合がございます。また、掲載しました情報はコラム作成当時のものとなりますので予めご了承ください。

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