木のはなし

■ 木や革など天然の素材と、プラスチックやスチールなどの人工の素材との違いは、年月を経たときに大きく感じられると思います。
丁寧に使っていても、傷や汚れがつきます。陽にも焼けるし、扉や引出しにもガタがきます。そうした欠点を補って余りある、いえ欠点さえも“味わい”“深み”と感じられる。天然の素材は年月と共に美しさを増していきます。人工の素材は残念ながら生み出されたとき以上の姿になることはありません。
もちろん、それには愛着を持ってきちんとお手入れをすることが必要になります。
■ 「自然素材のほうが絶対良いんだ!」なんて話じゃありません。木には木のいいところがある。プラスチックにはプラスチックのいいところがある。自分の生活に合った、自分の好きな家具を選んで、大事に扱うことが一番大切なことです。

音楽を聴くのと同じリラックス?

樹の年輪や木目の間隔には「1/f (エフぶんのいち)ゆらぎ」と呼ばれる“ゆらぎ”が存在するといわれています。

 

“ゆらぎ”とは、予測できない不規則な動きのようなもの。予測できない風の動きや温度湿度によって形を変える岩石など。規則正しく見える天体の軌道運動も少しずつゆらいでいます。この世に存在するすべてのものには“ゆらぎ”があります。
この“ゆらぎ”を分析していくと、いくつかの種類に分けることができます。その中のひとつが「1/f ゆらぎ」。発生メカニズムは詳しくはわかっていませんが、自然界に普遍的に見られる現象で、ものの動きの根本法則らしいといわれています。

この「1/f ゆらぎ」は生体と同じリズムをしています。そして心地よい快適な感覚を与えてくれます。例えば、好きな曲小川のせせらぎなどを聴くとリラックスするのは音響振動数のゆらぎが生体リズムのゆらぎと同じだから。人間だけでなく、家畜に聴かせれば卵をたくさん産んだり、農作物に聴かせれば育ちが良くなったりします。
 
このリラックス効果は、聴くだけでなく見たり体で感じたりすることでも得られます。自然界のものや手作りのものには「1/f ゆらぎ」がありますから、それらに囲まれて生活するだけで大きなリラックス効果を得ているのです。
 
天然の木のあたたかみ和む感じは普段なんとなく感じることができます。自然な感じ、見た目以上の深み味わい。自然な姿をそのまま生かした製品は、私たちと同じリズムで、私たちに働きかけてくれるのです。

学校と桜の木の関係

華々しく咲き潔く散るのごとき精神・・・
「武士道」といえば聞こえはいいですが、「お国のために華々しく散ることこそ日本男子の誇り」などというなら話は別。潔く散っていく桜の花の精神を軍人に植え付けるため、軍部は全国の兵舎に桜の木を植えます。その精神を若い頃から植え付けるために、桜の木は学校にも植えられました。
今、は新入生を優しく迎え入れる希望の花。戦争の悲しみを忘れることなく、いつまでも平和と希望の象徴であって欲しいです。

すがすがしさの元は微生物撃退物質?

せせらぎや葉のそよぐ音を聞いたり、鮮やかな緑やおだやかな陽の光に触れたり・・・。森林浴をすると、「1/f ゆらぎ」を感じ気分がリラックスします。

ひのき

樹の香りも私たちをとてもリラックスさせてくれます。これは森林から放散される成分「フィトンチッド」が気分を安らかにさせてくれるから。フィトンチッドは植物が微生物から身を守るために作り上げたもので、抗菌性消臭効果をもち、環境を浄化する働きがあります。フィトンチッドの主成分は揮発性が強いテルペン類で、香り以外の成分も多数含まれています。これを浴びることで、私たちは「すがすがしさ」を感じるのです。

ひば

木材にも同じ効果があります。木の香り成分は揮発性ですが長く木材の中に保たれるので、木造建築や木の家具にはリラックス疲労回復などの効果があるのです。
またそれぞれの木によって様々な成分が含まれ、その木特有の香りや効果をもたらしています。木の香りにはダニの繁殖を抑える働きもありますが、ヒノキ・ヒバ・スギなどにはさらに殺ダニ作用もあるといわれています。さらにヒノキ・ヒバには抗菌防カビ作用もあります。

スギ

香りといえば・・・購入したばかりの新しい家具は、塗装接着剤などの匂いが気になることがあります。これは換気をしてあげることでほとんど気にならなくなります。扉や引出しを開けて、部屋の風通しを良くしてあげてみてください。コーヒーやお茶の残りかすを入れておくのも効果ありです。

桜の語源

の話題をもうひとつ。「さくら」の語源にはいくつか説があります。
古事記に登場する「木花開耶姫(このはなさくやひめ)」「さくや」からきているとする説。また、「さ」は早苗、早乙女と同じ穀霊(穀物の霊)を表す接頭語で、「くら」は神霊が鎮座する場所を意味し、「さ+くら」で、穀霊の集まる依代(よりしろ)を表すという説。その他、麗らかに咲くという意味の「咲麗(さきうら)」からきているという説や、咲く花の総称である「咲くらむ」からきているという説などがあります。
馬肉のことを「桜」と呼びますが、馬肉以外にも鹿肉を「紅葉」、猪は「牡丹」や「山鯨」などと呼びます。これは仏教思想の影響で獣肉が禁止されていた時代に、公には食べることができないので呼び名を変えて食べていたから。ではなぜ馬肉が「桜」かというと、これも諸説あります。
肉の色が鮮やかなだからとする説。冬の間干し草や殻類を沢山食べ、肥えて脂がのった4月から5月、つまりの咲くころが一番美味しいからとする説。また、江戸時代の俗謡「咲いたになぜ駒つなぐ 駒が勇めば散る」に由来するとする説などがあります。

木の温もりは自分の温もり?

木に触れると「温かい」と感じます。
人は一定の割合で体から熱を逃がしています。逃げる量が大きいと寒い・冷たい、少ないと暖かい・温かいと感じます。木は熱伝導率が低い物質。触っても熱が奪われることがなく、自分の体温を感じて「温かい」と感じるのです。
また、木は太陽光の中の赤外線を吸収・再放射しているので、触っても瞬間的にヒヤリとすることがなくほんのりとした「温かみ」を感じるのです。
もちろん「1/f ゆらぎ」の効果や、森林や自然を連想させるイメージ、時にはその「郷愁」や「懐かしさ」を感じさせるデザインなど、心理的な影響も大きいのではないかと思います。


天然の素材ゆえに、反り・割れ・ヒビカビなど扱いにくい部分もあります。雨が続けば湿気を吸って引出しが開きにくくなる。・・反面、それは隙間をなくして引出しの中に湿気を寄せ付けない、木のありがたい性質。
素材をよく理解し、愛情をもってきちんとお手入れし、大切な家具と長〜くお付き合いしてください。


本文中に使用している家具・インテリアの写真はイメージです。当社にてお取扱いのない商品が含まれる場合がございます。また、掲載しました情報はコラム作成当時のものとなりますので予めご了承ください。


(2004年11月作成)


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