ゼンブ木・ミタメ木・キモド木

「木」と「木の加工品」と「木に似せたもの」

箱物の家具のほとんどは木製です。
木目のプリント素材を利用したものならともかく、天然の木を表面に使ったものはどれも1点もの。たとえ同じメーカーの同じシリーズの同じ品番のものでも、木目も違えば塗装ののりも違う、ひとつとして同じものはありません。
木は人類と付き合いの長い素材。植林し育てることによって限りなく付き合える素材。
大地に根をはって成長してきた木の歴史が、家具になっても受け継がれている。そう思うとなんだか素敵じゃないですか?

木のはなし

天然の木の温かさ、木の家具の良さを実感するには、「桐」の話が一番かと思います。

桐は「呼吸する木」と言われるほど、外気の状況に敏感に反応します。湿気の多いときには水分を吸って膨張し湿気を寄せ付けません。湿気が少ないと収縮し風通しをよくします。中の湿度を常に一定に保つよう働いているのです。火事の時には、すぐ桐タンスに水をかけましょう。燃えにくいと同時に、すばやく水を吸収し隙間をふさいで中の衣類を守ってくれます。
また熱伝導率が低いので、表面が焦げても中まで火がまわるのに時間がかかり、最後まで中身を守ってくれるのです。もちろん削り直しが出来ますから、表面がこげた程度なら新品同様に生まれ変わります。
もちろんこれは「桐」だけの特性です。が、天然の木がまさに“生きて”いて、私たちと生活を共にしている・・・そんなことを実感できる話だと思います。昔の農家では娘が生まれると庭に2本の桐を植え、成人して嫁入りするときに伐採して嫁入り家具を造ったそうです。

ぬくもりがある・・・イメージだけじゃありません。熱伝導率が低いから、触った自分の手のぬくもりをそのまま感じるのです。
森林浴ブームなんてのもありましたが、木の香りには気分を和らげたりストレスを解消する効果をもつものがあります。防ダニや防カビに効果があるものもあります。
木の自然な木目は、視覚的にも“なごみ”や“あたたかみ”を感じさせる効果があると言われています。
桐ほどではないにしろ、木は温度・湿度を一定に保とうと働きます。
曲がる、それる、割れる・・・etc。無垢板にはそういった欠点がありますが、集成材や合板がそれをカバーします。

「自然の素材だからとりあえずイイ」・・・そんな漠然とした理由じゃなく、木の良さにはちゃんと根拠があるんです。


■ 家具によく使われる樹木

ひとくちに天然の木と言っても、家具にはさまざまな種類の木が使われています。その中のほんの一部だけあげてみました。ご自宅の家具に使われている木は何ですか?

国産材

ニレ

ニレ科の広葉樹
重く硬いので加工はやや困難ですが、ねばりがあり曲木加工に適しています。「ニレ」はニレ科の樹木の総称で、「ハルニレ」「アキニレ」「オヒョウ」などがあります。

タモ

タモ

モクセイ科トネリコ属の広葉樹
硬く弾力性に富むので家具材や造作材のほか、バットやラケット、スキー板などの運道用具にも重用されています。
虎の縞模様に似た虎斑杢(とらふもく)や小さな節目の杢が二つ並んだ目節杢(めぶしもく)などがあらわれることも。

ブナ

ブナ

ブナ科の広葉樹
木肌は緻密で小さな斑(ふ)模様があるのが特徴。伐採後すぐに乾燥・処理をしないと狂いや腐朽が生じやすいですが、処理が適切なら硬く弾力性に富み、曲げ木加工に適した材です。

ナラ

ナラ

ブナ科の広葉樹
国産のほとんどは北海道産で、「道産の楢」と呼ばれています。洋風家具の材料などによく使われます。硬く、強く、水がしみ込みにくいため、酒樽や造船にも使われています。

外国産材

パイン

マツ科の針葉樹
カントリー調家具の材料としておなじみ。良質の樹脂を多く含み、使い込むほどに味わいのある飴色に変化します。重く、硬く、強く、堅固で適度な耐衝動性があります。「ヤニ」はペンキの原料としても利用されています。

メープル

バーズアイメープル

カエデ科の広葉樹
サトウカエデともいい、幹から出る樹液を加工したものがメープルシロップ。またカナダの国旗はメープルの葉をデザインしたものです。
鳥眼杢とも呼ばれる、小鳥の目のような小さな玉粒模様のものをバーズアイメープル(写真)と呼び、高級家具材として重用されています。

チェリー

チェリー

バラ科の広葉樹
日本のさくらんぼより大きい赤黒い実がなります。木肌は緻密で表面の仕上がりがとても美しい材です。

ウォルナット

ウォルナット

クルミ科の広葉樹
チーク、ローズウッド、マホガニーと並んで世界的な高級材。仕上がりの色の落付きと光沢のよさ、重厚さや高級感が人気を呼んでいます。

マホガニー

マホガニー

世界的な銘木の一つ。マホガニー色という家具の塗装色があるほど、その赤褐色は人々に深く馴染んでいます。木材は光沢をもち、加工性、耐久性、寸法安定性に優れています。

木→板へ

集成材に突板、MDFにパーティクルボード・・・一本の木はさまざまに加工され、違った形で家具に使われます。どのように姿を変えているか、家具の造りのほんのさわりをご紹介します。

無垢板

メープル無垢

天然木の一枚板で、「ソリッド」ともいいます。主に高級テーブルの甲板に使われます。重厚で高級感がありますが、反り、割れなどが発生したり歪んだりすることも。使い込むほどに木の風合いが出て、味わい深いものとなります。
木本来の形をそのまま生かしたものが多く、自然な曲線が高級感や安らぎ、落ち着きなどの癒し効果をもたらしてくれます。
写真はメープル無垢板のテーブル(参考資料)

集成材

集成材

小角材や板を木目が平行になるように縦横に接着し1枚の板にしたもの。テーブルの甲板やフローリングなどに使われます。
無垢板の欠点をカバーし、反り、割れ、歪みなどの狂いが少ない材。接着面がはがれることはまずなく、また節などの欠点が分散されているので、実は無垢板より強度が優れています。そして無垢板より安価。・・・じゃあ全ての面で無垢板に勝っているのかというと、やはり年月を経た味わいは無垢板にかなわないようです。

合板

厚さ1〜3mmの薄い単板(ベニヤ)を、繊維の向きが交差するように奇数枚張り合わせたもの。ラワン、シナ、センなどが使われます。
この合板を木枠の両側に貼り付け、表面に化粧用の薄い単板(突板)を貼り付けたフラッシュパネルが、家具用の部材として使われます。そのほか建築物の内装材、下地、運道具、玩具、文具など日常生活のあらゆる場面で使われています。

MDF

木材やその他の植物繊維を、蒸気で高温処理して繊維をほぐしたものに特殊な接着剤を加え熱と圧力で板状に成形したものをファイバーボードといい、密度によって3種類に分けられています。
MDFはミディアム・デンシティ・ファイバーボードの略で、中密度のファイバーボードのこと。硬く表面がなめらかです。ちなみに密度の薄いものから「インシュレーションボード」「MDF」「ハードボード」。

パーティクルボード

木材やその他の植物繊維質の小片(チップやフレーク)を、合成樹脂接着剤を使って圧縮加熱成形した板。テーブルの心材やフラッシュパネルの枠材として使われるほか、組立家具などにも使われています。

LVL

単板積層材(Laminated Veneer Lumberの略)。合板は繊維の向きが交差するように張り合わせますが、LVLは合板よりやや厚い単板を繊維の向きが平行になるように張り合わせ、縦方向の強度を増したものです。※ MDFやパーティクルボードはチップやフレーク、あるいはもっと細かい繊維を使うため、木材資源のリサイクルにも役立っています。

仕上げにお化粧

ダイニングボードやリビングボード、収納家具など箱物の家具に使われている「板」は、合板やMDFなどの表面を天然木の薄い板や合成樹脂でお化粧したものです。お化粧の方法にもさまざまありますが、代表的なものを挙げておきます。

天然木化粧合板

0.1〜2mm程度の化粧用の薄い単板(突板)を合板の表面に貼ったもの。木目や色調が美しいケヤキ、ナラ、ヒノキ、スギ、マホガニー、ウォルナット、オーク、チークなどが使われます。
天然の美しさ、あたたかさがありますが、天然ゆえに木目のばらつきや塗装ののりが1点1点違うなどの欠点もあります。普段はマメに乾拭き、手垢や汚れは「うすめた中性洗剤→よく水拭き→しっかり乾拭き」できれいにしてください。

プリント合板

合板の表面に直接柄をプリントしたものと、プリントしたシートを貼ったものがあります。木目以外にもさまざまな色柄が可能。質感は天然木にはかないませんが、均質な木目が大量に安価に得られます。
水や熱に弱く、日光に当たると色あせしてしまいます。シールやテープなどを貼るとはがすときに表面がはがれることも・・・

塩ビ合板

木目やさまざまな色柄の塩化ビニールシートを合板の表面に貼ったもの。加工がしやすく表面をエンボス加工したものもあります。見た目にはプリント合板より高級感があります。
熱や火に弱く、燃えると有害物質を出します。

ポリエステル樹脂化粧合板

表面をポリエステル樹脂でオーバーレイ加工したもの。多様な色柄が可能で、硬く耐薬品性に優れています。静電気によるほこりがつきやすいですが、水に強くお手入れは簡単です。

メラミン樹脂化粧合板

表面をメラミン樹脂でオーバーレイ加工したもの。他の合成樹脂と比べても最も硬く、美しい光沢があり多様な色柄が可能。耐熱性・耐薬品性に優れ、お手入れも簡単です。
水ぶきが出来、色柄が豊富に選べることから、キッチンに置く食器棚をシステムキッチンや冷蔵庫とコーディネートして選ばれる事が多い面材です。※ オーバーレイ加工:合板に化粧材料を貼り付けたりかぶせたりすること

印刷技術の向上により、天然木と見分けがつかないようなプリント材も可能になりました。そうすると「規則正しい木目のほうがいい」 「同じ木目でそろえたい」ということで、天然木よりプリント材を選ぶ・・・という選択肢もありえます。
厳選された美しい木目だけを使った高級家具もすばらしいですし、節や杢、不ぞろいの木目をそのまま生かした家具も、その無骨さが逆に自然の木のあたたかさを伝えていていいなぁと思います。

素材の特徴、利点欠点を考慮して、その家具に適しているか、置く場所に適しているか、そして予算と相談しながら、じっくり家具選びを楽しんでください。


(2002年4月作成)


本文中に使用している家具・インテリアの写真はイメージです。当社にてお取扱いのない商品が含まれる場合がございます。また、掲載しました情報はコラム作成当時のものとなりますので予めご了承ください。

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