プラスチック(plastic)のオハナシ

現在日常生活のありとあらゆる場面で使われているプラスチック。家具ももちろん例外ではありません。軽くて丈夫で透明性があり、水やガス・電気を通さない、衛生的にも優れている。熱を加えると変形するため成型が容易で、着色性もいい。「簡単に」「安価に」「大量に」「均質な」製品をデザインし作ることができる「プラスチック」は、家具材料として欠かせないものです。

「プラスチック」という言葉から、「安っぽい」「冷たい」「味気ない」といった言葉を連想される方も少なくないと思います。確かに素材そのものに表情のある天然木や皮革に比べたら、プラスチックはちょっと味気ないかもしれません。その分、作り手や使う人の「想い」でいくらでも表情をつけられるのが、プラスチックの魅力ではないかと思います。

PLASTICって?

「プラスチック」って?

プラスチック【plastic】は「形成する」という意味の英語。語源はラテン語の【plauticus】で、「形をつくることができるもの」という意味です。天然の樹脂のようなやわらかく流動的なものを、型に流し込んだりして作り出した固形の物質がプラスチックです。塩化ビニルもポリエステルもナイロンもPETもアクリルもプラスチック。要は発泡スチロールもペットボトルもビニールハウスもラップも飛行機の窓も紙おむつもみんなプラスチックなんです。プラスチックは、接着剤や塗料として使われていた樹脂(松ヤニなど植物の分泌するねばねばした液体)を人工的に合成する研究から生まれたため、天然の樹脂に対して「合成樹脂」と呼ばれます。

大きく分けると「チョコレート」と「クッキー」

プラスチックは「熱可塑性プラスチック」と「熱硬化性プラスチック」に分けられます。違いを一言で言うと、「チョコレート」と「クッキー」です。

「熱可塑性プラスチック」は、加熱するとやわらかくなり、冷やすと固まる樹脂。成型した後も、加熱するとまたやわらかくなるので形を変えることができる、チョコレートのような性質を持ったものです。家具材料としては、ソファの張地などに使われる塩化ビニルやアクリル樹脂がこれに当たります。

「熱硬化性プラスチック」は、加熱するとやわらかくなり、化学反応で固まる樹脂。
いろんな材料を混ぜてこねて焼き上げたクッキーのように、いったん固まると再び熱してもやわらかくはなりません。テーブルの天板やダイニングボードの扉に使われるメラミンやイスの心材・ソファのクッション材のウレタンフォームなどが、このクッキー型プラスチックです。

これもプラスチック

変幻自在のスグレモノ 塩ビ(ポリ塩化ビニル/PVC)

ラップ、ビニール風呂敷からビニールハウス、そしてソファ、巾木(はばき:家の内装に使う部材、壁と床の境に付けられます)まで。他のプラスチックにない塩ビの最大の特徴は、やわらかいものから硬いものまで自在に作れること。 原料の塩ビ粉末は軽石のように孔があり、「可塑剤」という液体を混ぜると、孔にしみ込んでどろどろになります。「可塑剤」を混ぜるか否かで、やわらかいものから硬いものまで自由自在に作ることができます。

人工皮革は「擬革」「合成皮革」「人工皮革」の3つに分けられますが、「擬革」の代表が塩ビレザー。織物や編物の生地表面にポリ塩化ビニル樹脂をコーティング(塗布)し、皮革のような外観に仕上げたものです。

美しく、かつ扱い易い優等生 「メラミン樹脂」

メラミン樹脂とフェノール樹脂をそれぞれ浸透させた紙を何枚も重ね、高温高圧で成型したプラスチック板が「メラミン板」。
表面は硬く、耐久性・耐熱性にすぐれ、汚れもしみ込みにくいため、天板やキッチンボードの扉などに使われます。水ぶきで簡単に汚れが落ち、お手入れもシンプル。
美しい光沢があり、高級感のある素材です。

繊維を加えると百人力 「ポリエステル樹脂」

ポリエステル繊維とペットボトルは、製法が違うだけで同じ原料から出来ています。それに対して、ポリエステル樹脂は同じ「ポリエステル」でも原料が違います。繊維とペットボトルはチョコレート型、ポリエステル樹脂はクッキー型というのも大きな違いです。

ポリエステル樹脂はそのままでも使いますが、主にガラス繊維などで強化して、工業用ヘルメット、浴槽、レジャーボートなどに使われます。ミッドセンチュリーのインテリアでおなじみのFRP(Fiber Reinforced Plastics)、アルミより硬く鉄より強くさびない素材です。ポリエステル樹脂単体では主に人造大理石として、FRPとしてはイームズのシェルチェアに代表されるように一体成型の椅子やバスタブ、洗面化粧台などに使われています。

プラスチックの女王 「アクリル樹脂」

プラスチックの女王とも呼ばれるアクリル樹脂の最大の特徴は、ガラスにも匹敵するその透明性です。そのためレンズなどの光学製品や照明器具、ガラスの代用として使われます。また表面に光沢があり、クリスタルガラスのような輝きを持つので、置物やテーブルウェアにも使われます。

熱や衝撃に弱く、傷がつきやすいという欠点もありますが、耐候性があり、風雨や太陽光線にさらされても劣化しにくいため、車のテールランプ、看板、カーポートの屋根などにも使われます。写真はクリアなアクリルを脚に使用したダイニングテーブル。優しさを保ちつつも、スタイリッシュに仕上がっています。

「ポリスチレン」 の三段変化

アクリルと同じように美しい透明性を持つ、「ポリスチレン」という樹脂があります。硬く、成型や着色が容易で、古くから使われていますが、アクリル同様衝撃に弱いのが欠点です。またアルコールやベンジンなど有機溶剤に弱いのも欠点。

その欠点をカバーするために、ポリスチレンにゴムを混ぜたのが「耐衝撃性ポリスチレン」。透明性や硬さは多少犠牲になりますが、衝撃に対して強くなっています。またポリスチレンにアクリロニトリルを混ぜて、溶剤に対して強度を増したのが「AS樹脂」。100円ライターに使われています。
そして、ゴムとアクリロニトリル、両方を混ぜ「耐衝撃性ポリスチレン」と「AS樹脂」両方の長所を兼ね備えたものが「ABS樹脂」です。
家具への利用は少ないですが、ABS樹脂は家電やOA機器の外枠、また収納ケースなどに使われることもあります。

泡を抱くプラスチック 「ポリウレタンフォーム」

内部に泡を含んだプラスチックがあります。椅子の芯材や食器洗いスポンジ、化粧用パフ、断熱材などに使われます。泡にも2種類あります。食器洗いスポンジなどは押さえつけると変形し離すと元に戻ります。これは泡と泡がつながっていて空気や水が通りやすいためで、そういう性質のものを「軟質フォーム」と呼びます。図下のように泡が独立しているものは、力を加えてもあまり変形しない「硬質フォーム」です。上の例でいうと、スポンジ・パフが「軟質フォーム」、芯材・断熱材が「硬質フォーム」です。

ポリウレタンに気泡を含ませたものがポリウレタンフォーム。「軟質ポリウレタンフォーム」はマットレスや枕、シートや肘掛などのクッション材に、「硬質ポリウレタンフォーム」は椅子の芯材に使われています。

今後のプラスチック

今まで使われていない用途にでもそれに適したプラスチックが開発されればすぐに取って代わっていくことでしょう。大量生産、大量消費の現在、プラスチックの存在は文明レベルで必須となっています。アイディア次第で、インテリアショップに並ぶおしゃれな商品が次から次へと作られているのもプラスチックならではの魅力です。


(2003年4月作成)


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