和家具のメンテナンス
明治大正時代に西洋家具が輸入・生産されるまで、日本には「家具」という概念自体あまり馴染みのないものでした。椅子のようなものが登場したのは弥生時代。正倉院には「厨子(ずし)」など様々な家具が納められています(広義では観音開きの仏壇も厨子に含ます)。平安時代に寝殿造という生活様式が確立すると、御簾・帳台・屏風など日本独自の調度品が生まれます。箪笥が登場するのは江戸時代。それまでは葛篭(つづら)、行李(こうり)、櫃(ひつ)、長持など箱型の収納家具を使用していました。江戸後期には一般庶民にも普及します。明治以降、封建的諸制度から開放されると、商工業が活発になり西洋家具に対して和家具も量産されるようになります。
主な産地は、旭川(北海道)・静岡(静岡県)・飛騨(岐阜県)・府中(広島県)・徳島(徳島県)・大川(福岡県)など。
無垢材をふんだんに使い、確かな技術を持った職人が丹精こめて作り上げた和家具は海外でも注目されています。
和家具全般
基本的なお手入れは「木製家具のお手入れ・メンテナンス」をご覧下さい。
家具は、直射日光の当るところ、また冷暖房器のそばなど温度差の激しいところ、湿気の多いところには設置しないでください。壁から少し離して置くと、風が通りカビを防ぐことが出来ます。そして、必ず平らなところに置いてください。
普段はやわらかい布で乾拭き。ぬらしたり汚したりしてしまったらすぐにふき取るよう心がけてください。
箪笥類
引き手金具や丁番(蝶番)、帯金具や棹通し金具など、意匠上金具がついているものがあります。丁番のゆるみや、釘の打ちつけなど時々点検し、締め直したり打ち直したりして下さい。鉄の場合錆びることがありますので、椿油(ツバキアブラ)などを表面に少量塗り柔らかい布でしっかり乾拭きして下さい。錆止め、艶出しにもなります。
引き出しに使用している桐の木は湿気が多くなると膨らむので、引き出しの開け閉めきつくなることがあります。扉や他の引き出しを開け放したりしてもまだきつい場合は、引き出しを抜き、風通しの良い日陰で風に当てると元に戻ります。
虫害を発見した場合は、すぐに殺虫・防虫処理をして下さい。他から虫が入ったことも考えられます。ほおっておくと被害が拡大する恐れがあります。
テーブル類
熱い物や濡れた物、底のザラついた物を直接置いたり引きずったりしないで下さい。またビニールやガラスを長時間のせて使用しないで下さい。変形や変色、傷の原因となります。 水分をこぼしたらすぐにふき取りましょう。汚れもすぐにふき取るよう、普段から心がけてください。
桐箪笥
桐のタンスの引き出しの湿気が多くなると膨らんで、隙間をふさぎ湿気を入れません。逆に空気が乾燥すれば隙間をつくって空気を入れます。常に内部の湿度を一定に保ち、衣類の収納に最適な材です。また、熱伝導率が低く着火点が高い、吸水性がよく消火の水を早く吸収するなどの特性があり、ぼや程度の火災なら中の衣類をしっかり守ってくれます。虫に強いのも特徴です。
お手入れ
桐箪笥は直射日光を嫌います。また暖房が直接あたる場所も避けてください。風通しが良く、湿気の少ない、平らなところに設置するようにして下さい。
普段のお手入れは、柔らかい布で乾拭きしてください。ほこりが付くと「かび」や「しみ」の原因になる場合があります。濡れ雑巾や化学雑巾は絶対に使用しないで下さい。
もし水や油をつけた場合は、拭かずに柔らかい紙をあてて水気を吸い取り、との粉を振って乾かします。
洗い直し
桐ダンスは修理・再生できることも特徴の一つです。
桐は柔らかく、キズや汚れがつきやすいのが難点ですが、無垢板を使ってキチンと造られた桐箪笥は洗い直しをすることで新品同様によみがえるのが最大の特徴です。
表面の汚れを洗い、削りなおしをすると元の木肌が現れます。塗装を施し、新しい金具をつければ新品同様。(注:キズや汚れの程度にもよります)
きちんと職人の手で手造りされた桐箪笥は、再生を繰り返し、代々受け継いで、3代は使えるといわれています。
漆塗り
「漆」は英語では「Japan」。日本を代表する優れた天然塗料です。乾くと非常に堅くなり、潤んだような美しい光沢が出ます。まろやかな手触りで、耐湿性を持ち、薬品にも侵されません。
漆でかぶれるのは、漆の主成分「ウルシオール」の毒性によるもの。乾いていない状態の「ウルシオール」は毒性を発散して漆性皮膚炎をおこしてしまいますが、製品となって完全に乾いた漆はどんなにかぶれやすい人でもかぶれることはありません。
漆家具のお手入れ
直射日光や熱が長時間当たる場所には置かないで下さい。漆は紫外線に弱く、光によって漆の分子が破壊されてしまいます。色あせしたり、光沢が無くなったり、シミが付きやすくなったりします。
また時間がたつにつれ色が透けてくるという特徴がありますが、光の当たっている部分とそうでない部分で色の違いが出てきてしまいます。
普段は乾いたやわらかい布で乾拭きします。
座卓などで万一お茶や水をこぼした場合はできるだけ早く拭き取ってください。
もし表面の艶が消えてしまったら、綿にごく少量の菜種油をつけて拭いたあと、乾いたやわらかい脱脂綿で油のくもりがなくなるまで丁寧に拭いてください。美しい光沢が蘇ります。
漆器のお手入れ
漆は汚れが落ちやすく水切れもいいので水やお湯で汚れを落とし、ふきんで水気をふき取ればきれいになります。もちろん他の食器と同じように洗剤とスポンジを使っても大丈夫です。
他の食器とぶつかったりこすれたりすると傷ついてしまうので、いっしょにつけおきしたりせず、まず漆器を先に洗うようにするといいでしょう。
食器洗い機や乾燥機、また電子レンジなどは使わないで下さい。急激な温度や湿度の変化で、塗装面や木部を傷めてしまう場合があります。
匂いが気になる場合は?
塗ったばかりの漆は匂いが気になることがあります。使って、空気に触れるうちに匂いは自然に消えていきます。
どうしても気になる場合は、直射日光の当たらない風通しの良い場所に1〜2週間置いておくとよいでしょう。漆器の場合は、米びつの中に何日か入れておくと匂いが消えます。
和紙・竹製品等
和紙インテリアのお手入れ
和紙のランプやオブジェなどは、気持ちが和み清々しくなります。
普段からまめにハタキをかけたり、やわらかいハケやブラシでホコリを落としておきましょう。デリケートなので破らないようにそっと行います。そして定期的に柔らかい布で軽くよごれを拭き落として下さい。小麦粉を耳たぶくらいの固さに練ったもので汚れを取る方法もあります。
竹製品のお手入れ
普段は柔らかい布で乾拭き。汚れが目立つ場合は中性洗剤で水洗いし、日なたで十分に乾燥させます。
天然素材なので、温度の変化に敏感で伸縮が生じます。乾燥による割れを防ぐためには固く絞った濡れ雑巾で拭くと良いでしょう。湿気の多い場所ではカビが発生しやすいので、換気を心がけてください。
和家具の今後
暮らしのスタイルが変わって和家具を見る機会が減ってきました。しかし、歴史と伝統あふる魅力は今なお健在です。現代のライフスタイルにもマッチするよう和風食器棚の水屋箪笥や茶箪笥などの和家具をリメイクした和風家具も作られています。上品な和の雰囲気をこれからもお楽しみください。
(2005年7月作成)
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