Mid-century modern

ミッドセンチュリーとは?

直訳すると「世紀の半ば」。1940年から1960年代にかけてアメリカを中心におこった新しい家具デザインのムーブメントを指します。
戦時中に開発された様々な技術や新素材。戦争が終わると、それらを応用して多くのデザイナーたちが斬新かつハイクオリティーな家具を生み出します。
また工業化が進み大量生産が可能になった時代でもあり、工業製品としてローコストで合理的、機能的な家具が次々と生み出されました。

カフェで注目を浴び、若者を中心にブームとなった「ミッドセンチュリー家具」ですが、中高年の方々には「昔うちにあったものが何故今更?」・・・なんだそうです・・・

ミッドセンチュリー家具の特徴

ミッドセンチュリーの家具は、大量生産でありながらどこか暖かみを持っています。

マシュマロチェア - ジョージ・ネルソン

マシュマロチェア

今のように、様々な技術が確立されているわけでも、コンピューターグラフィックで簡単にデザインできるわけでもなく、すべてがデザイナーの手による試行錯誤の繰り返し。様々な技術を模索しつつ、人間工学にもとずいた上で斬新なデザインを生み出していく。そんなデザイナーたちのパワーが、半世紀たった今若者に受け入れられているのかもしれません。

自然素材のぬくもりとはまた別の、人間の手による手作りのぬくもり。戦争から開放され次々と新しいものを生み出していた時代の人々のパワー。

ミッドセンチュリー家具の魅力は、見た目の斬新さや未来感覚だけではなく、そうしたデザイナーたちの心意気が感じられるところかもしれません。

ミッドセンチュリー家具の新素材

DCW - C&R・イームズ

DCW

プライウッド(成形合板)

薄い単板を重ねて接着し、加熱プレスして曲面を作り出したもの。
18世紀からあった技術ですが、家具に使用されるようになったのはこの時代。
ミッドセンチュリーを代表するデザイナー、C&R・イームズは、アメリカ海軍からローコストで大量生産が可能なギブスの開発を依頼され、成形合板の曲面を利用したギブスを開発・納品します。このとき飛躍的に向上した成形合板の技術が、戦後多くの家具デザインに取り入れられています。

・DCW・・・ダイニング・チェア・ウッドレッグ

サイドシェルチェア - C&R・イームズ

サイドシェルチェア

FRP

ガラス繊維で補強されたプラスチックで、ミッドセンチュリーを象徴する素材。
戦時中は飛行機や船舶内部の補強、ヘルメットなどに使われていたようですが、常に新素材をイスのデザインに応用することを考えていたC&R・イームズが1948年FRP製のイスを発表、1950年ハーマン・ミラー社より製品化されました。
単純なプレス加工により大量生産が可能で、屋内外どこでの使用にも耐えうる新素材。イームズ夫妻の「いいデザインを安く誰にでも」というコンセプトがよく現れています。

パントンチェア - ヴェルナー・パントン

パントンチェア

プラスチック一体成型

プラスティック一体成型という画期的な方法で名作「パントンチェア」を生み出したのはヴェルナー・パントン。デザイナーを束縛せず、安く生産できるプラスティックに魅了され、実験を重ねた結果、流れるようなフォルムの美しいイスにたどりつきました。プラスティックだからこそ生まれた美しさです。

スタッキング

大量生産、大量消費の時代。ローコストで合理的な家具が生み出される中で、この時代に特に普及したのが「スタッキング」機能です。「スタッキング」とは、積み重ねできる機能のこと。大勢人が集まる場所で威力を発揮します。
上の「パントンチェア」も「世界初のプラスティック一体成型」であることと、もう一つ、「スタッキングできる」ということが大きな特徴となっています。
体育館や食堂など多くの人が集まる場所で、今では当たり前になっている「スタッキングチェア」ですが、その背景には、戦後・大量生産と大量消費・デザイナーたちの開放されたパワー・・・といったキーワードがあるのかもしれません。

スタッキングできるパントンチェア

デザイナー

ワイヤーチェア - C&R・イームズ
チューリップチェア - エーロ・サーリネン
エッグチェア - アルネ・ヤコブセン

左より、C&R・イームズのワイヤーチェア/エーロ・サーリネンのチューリップチェア/アルネ・ヤコブセンのエッグチェア

C&R・イームズ

アームシェルチェア - C&R・イームズ

チャールズとレイ・・・、ミッドセンチュリーを代表するデザイナー夫妻です。
上で紹介した、プライウッド製ダイニング・リビングチェアシリーズ、FRP製シェルチェアシリーズのほかにも、ワイヤーチェア、ラウンジチェア&オットマン・・・etc・・・数多くの作品を残し、また家具デザイン以外の分野でも活躍しています。写真は「アームシェルチェア/ロッカーベース」 彼らのデザインは形式的な美にとどまらず、日常生活の様々な「問題」を解決するものでした。

ヴェルナー・パントン

ハートコーンチェア - ヴェルナー・パントン

デンマーク出身のパントンは、北欧の伝統的な技法ではなく、プラスティックに魅了されました。一枚のプラスティックを使ったイスを作りたいと何年も試行錯誤を繰り返した結果、代表作「パントンチェア」を生み出します。流れるようなフォルムの美しい形状に加え、大量生産が容易でスタッキングできるなど機能性も兼ね備えたイスです。
写真はハート型のフォルムが印象的な「ハートコーンチェア」。

柳 宗理

バタフライスツール - 柳宗理

家具・照明からテーブルウェア、歩道橋や高速道路の防音壁まで多岐にわたって活躍する、日本を代表する工業デザイナーです。
デザインのためのデザインではなく、使い勝手をまず優先し、「用」から生まれる必然の美を生み出しています。
代表作は写真のプライウッド製「バタフライスツール」。蝶が羽を広げたような美しいスタイルです。

ハリー・ベルトイア

ダイアモンドチェア - ハリー・ベルトイア

一本一本のワイヤーを丁寧に曲げ、溶接してできた「ダイアモンドチェア」。デザイナーのハリー・ベルトイアは彫刻家でした。
彫刻家らしく、自らの手でワイヤーを曲げ、試行錯誤を繰り返しながらこの美しいイスを完成させたそうです。屋外使用にも適し、あらゆる角度から見て美しいイス・・・
ベルトイアはこのワイヤーシリーズを発表した後は彫刻に専念し、イスを作ることは無かったそうです。


(2003年1月作成)


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