椅子四方山話 4 -良い椅子ってどんな椅子?-

人間工学と椅子

椅子、特にパソコンチェアの売り文句に、「人間工学に基づいた」というフレーズが良く使われます。
椅子は身体を預ける家具。私たちの身体に最も密着した家具です。デザインの良し悪し以上に、座り心地や疲れにくい構造、立ったり座ったり動きやすいことなど機能が求められます。そしてそれは、人間の身体と切っても切れない関係なのです。

人間工学(=human engineering)とは、「人間の身体や心理の特性に合わせて、機械、道具、施設などを作製・改善することを研究してゆく科学」のこと。「エルゴノミクス」とも言います。

バランスチェア&アーロンチェア

指の動きにあわせたキーボードの配列、握りやすく滑りにくいハンマー、ミスをなくし効率を良くする工場のレイアウト、手にフィットし疲れにくいマウス・・などは人間工学の例。何か事故が起こったとき、それが道具の設計ミスなのか、人間の生理的あるいは心理的な要因によるものなのか、原因を見極め再発を防止する・・・といった研究も人間工学の分野です。人間が道具や施設を使う場合の全てに関わるのが、人間工学です。

身体にフィットする椅子とは?
長時間座っていても疲れない椅子とは?
ストレスを感じない椅子とは?
一番楽な姿勢を維持できる椅子とは?
子供の成長を促す椅子とは?

バランスチェア(上・イラスト)は、‘座る人の動きにあわせてくれる椅子’
人間の身体は、座っていても常に動いていたいと欲しています。バランスチェアは姿勢がさまざまに変えられて、かつどんな姿勢でもバランスを保てるようにと作られています。‘ひざに体重をかけて座る’と誤解されがちですが、体重はあくまでもお尻で受けます。やや前傾姿勢になることで背筋が伸び、腰や内臓に負担をかけない楽な座り方になります。

アーロンチェア(下・写真)は、‘あらゆる体型と姿勢、作業内容に対応した椅子’ 座面の高さ、リクライニングの角度・硬さ、アームの高さ・角度、背もたれのサポートの位置・・などさまざまな調整が可能で、あらゆる状況に対応できる椅子です。

椅子の品質とは切っても切れない人間工学。
これから先研究が進めば、常識を覆すような椅子が登場する???・・・かもしれません・・・

座ることを楽しもう!

「座る」ことは、ある意味とても疲れること。変な座り方をすれば腰痛や肩こりの原因にもなります。「自分に合った椅子を選ぶ」ことと、「体に負担をかけない座り方をする」ことがとても大切です。

オットマンでリラックス

ソファに座る

ソファに長時間座っていて、身体が固まったように感じたり、腰が痛くなったりしたことはありませんか?
座面が高すぎるソファは、足が浮いてしまってももの裏側が圧迫されてしまいます。
奥行が深すぎるソファは、腰が浮いてしまって余計な負担をかけてしまいます。
やわらかすぎるソファは、身体が沈み込んだままあまり動かず、不自然な姿勢を知らず知らず続けてしまっています。

家族全員の体型にピッタリ合うようなソファはありえませんから、それぞれ‘自分が一番楽な姿勢になれる座り方’で座ることが大切です。

まず意識しておきたいのは、深く座って背筋を伸ばすこと。
腰が浮いてしまうようなら、クッションを背中に当ててみましょう。大小たくさん用意しておいて、座るたびに微調整してみてください。
マルチカバーをかけている場合は、座っているうちにカバーがずれて無理な体勢にならないよう、しっかりはさみこんで固定しておきましょう。
座るにしても、寝転ぶにしても、時々姿勢を変えることが大切です。不自然な体勢と気付かずに、長時間続けてしまっていることもあります。特にやわらかすぎるソファは沈み込んだまま動かない場合が多いので、意識して身体を動かしてください。
足が届かない(かかとまで床につかない)場合は、クッションなどを足置きにしてみてください。オットマンを使うのも1つの方法です。

オットマンは足乗せ台としてソファの補助的な役割をします。だいたいはソファとセットになって販売されています。足を乗せるのはもちろん、普通にスツールとして使ったり、ちょっとしたテーブル代わりにもなります。踏み台代わりにしたり、お子さまが乗って遊んだりしないよう注意してください。

チェアに座る

ダイニングチェアやデスクチェアなども基本は同じ、深く腰掛けて背筋を伸ばしましょう。さらに足は軽くそろえ、お腹を引っ込め、軽くアゴを引き、やや前かがみになると良いようです。足を組むのは身体のゆがみの元です。

椅子と机の高さが合っていること。椅子の高さが自分に合っていることも大切です。

足は、かかとが無理なく床につくように。家族みんなが使う食卓では高さをあわせるのは難しいので、背の低い方・お子さまは足元に台を置き、足を乗せると良いようです。
お尻と腰をしっかり固定しましょう。腰が浮いてしまう場合は、座布団やクッションを当てると楽になります。
肘つきの椅子のほうが楽ですが、肘あての高さが身体に合っていないと逆効果です。

自分に合った椅子を選び、楽な姿勢になるよう座り方を工夫すること。椅子に座らされないことが大切です。「この椅子疲れるな」と感じたら、座り方を変えてみてください。「座る」ことに気を配り、「座る」ことを楽しみましょう!

椅子は座って選べ!

自分の身体を預ける家具ですから、「相棒」を探すつもりで真剣に、かつ「座る」ことと同じくらい楽しんで選んでみてください。

あなたが座ってくれるのを待っている・・

座り心地で選ぼう

家具を選ぶときの基準は価格・デザインなどさまざまですが、ソファやチェアに限っては使い心地を最優先させて欲しいと思います。 まずは店頭で座ってみること。
その際、かかとの高い靴は脱いで、奥まで深く腰掛け、できるだけ長い時間座ってみること。これが大切です。

・足がかかとまでつかない高い椅子は、太ももの裏側を圧迫しかえって疲れます。
・ソファにしてもダイニングチェアにしても、長い時間をそこで過ごすことになります。ほんの数秒お尻をつけてみるだけではなく、しっかりと背もたれにもたれてじゅうぶん試してみましょう。
・奥まで深く腰掛けて、腰をしっかりサポートしてくれるか、背もたれが痛くないかチェックしましょう。肩甲骨や腰骨に違和感はありませんか?
・クッションの下の固い座面や、(ソファの場合)スプリングの存在を感じたりしませんか?

できれば家族全員でお出かけになることをオススメします。お一人お一人が納得のいく椅子を選んでください。

目的に合った椅子を選ぼう

ダイニングチェアは食事が快適に出来ることももちろんですが、軽さもポイントです。よく動かすし、床を傷つけやすい。毎日使うことを考えれば、軽くて丈夫で持ちやすい椅子が便利です。

ダイニングチェアはダイニングテーブルと、デスクチェアはデスクと、ソファはリビングテーブルと。机と椅子の相性はとっても大切。使い心地はもちろん、使っていないときの椅子と机の収まり具合も重要です。

ソファは家族全員の体型に合わせることは出来ません。背の低い人に合わせて選ぶとよいでしょう。座面が広いソファを選べば背の高い人もしっかり座れます。

あまりオススメはしませんが、ソファの前に座って背もたれ代わりにされる方も多いと思います。その場合は重量感があり背中が痛くない物を。・・・でもせっかくですからソファに座ってくださいね。

座っているだけで気持ちが安らぐ・・・そんな一脚に出会えますように。

(2007年8月作成)

本文中に使用している家具・インテリアの写真はイメージです。当社にてお取扱いのない商品が含まれる場合がございます。また、掲載しました情報はコラム作成当時のものとなりますので予めご了承ください。

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