椅子四方山話 -DESIGNER's Collection-
数ある家具の中でも、椅子は最も人間の身体に密着した家具です。
包み込むように、あるいは私たちの動きに密接に・・・
デザインの良さと同時に、椅子としての機能が優れていることも求められます。
多くのデザイナーや建築家・芸術家たちが優れた椅子をデザインしてきました。
それらは多くの美術館に収蔵されると共に、
私たちの身近なところでも目にすることが出来ます。
今回はそれらの椅子たちのちょっとしたお話をご紹介します。
曲木の椅子
1830年代〜
ミヒャエル・トーネット//トーネット兄弟社
曲木技術の創始者と呼ばれるトーネット。無垢材を熱と蒸気で蒸し型にはめて曲げることで、美しい曲木の椅子を造り出しました。また大量生産を可能にし、それまでの注文生産から大衆のための椅子の生産を可能にしました。
シンプルで美しい曲木のフォルムに加え、軽くて丈夫で当時としては比較的安価、置く場所の雰囲気を損なわないスタイル。時代を超えたロングセラーとなっています。
ハイバックチェア
1902
チャールズ・レニー・マッキントッシュ
建築家マッキントッシュがスコットランドに建てた出版人の別荘「ヒルハウス」。そのベッドルームにこの椅子は置かれています。直線を強調した美しい姿は、静かに存在を主張し空間を引き締めます。
ホテルや高級マンションのロビーに置かれているのをよく目にしますが、決して主張しすぎず、それでいて空間を取り込む力を持つ。燐とたたずむ姿がとても美しい椅子です。
ワシリーチェア
1925
マルセル・ブロイアー//ノール社
スチールパイプを初めて使った家具として有名。自転車が発想のヒントになっているそうです。座面は発表当時織物でしたがすぐに皮革が使われています。
空気や空間がデザインと一体になっているというか、線と平面で構成された斬新なデザインにさらに厚みや広がりを感じさせてくれます。
シェーズロング
1928
ル・コルビュジェ/ピエール・ジャンヌレ
シャルロット・ペリアン
カッシーナ社
3人の共同制作によるLCシリーズの寝椅子タイプ。コルビュジェは世界的な建築家で、日本では上野の国立西洋美術館を手掛けています。コルビュジェの名前が最も有名ですが、実質的なデザイナーはペリアンだったそう。
「座るための機械」として機能と美を追求した美しい椅子です。
セブンチェア
1955
アルネ・ヤコブセン
フリッツ・ハンセン社
アリのような形のアントチェア、そのシリーズとして発表されたのがセブンチェアです。成形合板を3次元に曲げ加工したシンプルで美しい形に、すらりと伸びたスチールパイプ。洗練された美しさを持ち、かつ軽くて丈夫で積み重ねが出来る便利さ。
似たような椅子もたくさんあるけど、さりげなく置いてさりげなく画になる、唯一無二の椅子です。
ダイアモンドチェア
1952
ハリー・ベルトイヤ//ノール社
ベルトイヤは金属ワイヤーの彫刻を得意とした彫刻家です。ベルトイヤの実力を認めていたノール社の協力により、この美しいワイヤーチェアシリーズは生まれました。
彫刻家らしく、自らの手でワイヤーを曲げ感触を確かめるといった試行錯誤の繰り返しで、ゆっくりゆっくりとつくり上げられた椅子。座る機能を踏まえた上でのこの芸術品は、屋内はもちろん屋外使用の定番となっています。
アーロンチェア
1992
ビル・スタンプ/ドン・チャドウィック
ハーマン・ミラー
(2002年5月作成)
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