椅子四方山話 3 - history -

モノを置く家具、収納する家具、家具にもいろいろありますが、自分の体をそっくり預けてしまう椅子は私たちの生活に最も密接した家具ではないでしょうか?

古くは“王座”と呼ばれるように権威を象徴するものであり、また職人がひとつひとつ造りだす芸術品であったものから、やがて人間工学に基づいた体を休めるもの、心地よいもの、民衆の生活用品として、そしてインテリア空間を造りだすデザインへ。多くの建築家・デザイナーが名作を生み出し、さまざまなスタイル・場に合わせてたくさんの椅子が生まれています。

今回はそんな椅子の歴史をほんの少し紐解いてみます。

権威の象徴からデザインへ

古代

椅子四方山話 ツタンカーメン王時代の椅子

ツタンカーメン王
時代の椅子

椅子四方山話 クリスモス

クリスモス

紀元前3000年ごろのエジプト、すでに外観も機能も現在のものと大差ない、椅子の原型のようなものが使われていました。
ツタンカーメン王の墓からは、まさに権威の象徴ともいえる黄金の玉座や寝台が発掘されています。王権を誇示するにふさわしい、金箔や豪華な彫刻が施された椅子。そのほかにもさまざまな宮殿用の椅子や白塗りのスツールなどがあり、持ち運びできる折りたたみ椅子も考案されています。

ギリシャ・ローマ時代には、木製以外に青銅・鉄・大理石製のものも作られます。曲線を持つ柔らか味のある椅子が作られるようになり、頑丈な男性用の椅子に対して、美しい曲線脚を持つ女性用のクリスモスが有名です。隙間風や床からの寒気を防ぐため脚が届かないほど座面が高く、それは同時に格下のものへの権威保持の表れでもありました。ギリシャ・ローマ時代には、木製以外に青銅・鉄・大理石製のものも作られます。曲線を持つ柔らか味のある椅子が作られるようになり、頑丈な男性用の椅子に対して、美しい曲線脚を持つ女性用のクリスモスが有名です。隙間風や床からの寒気を防ぐため脚が届かないほど座面が高く、それは同時に格下のものへの権威保持の表れでもありました。

中世〜近世

椅子四方山話 サボナローラ

サボナローラ:X脚はルネッサンス時代の特徴

ビザンチン・ゴシックの時代には教会建築と深く関連して、直線的で素朴な椅子が多く作られます。硬く、冷たく、腰掛けることは出来ても、座って寛ぐものではありません。

椅子四方山話 ルイ15世式のアームチェア

ルイ15世式のアームチェア

やがてルネッサンスが花開くと、建築的で格式ばった意匠から、ローマ時代を基調とした装飾がさかんになります。背や座面をビロードなどで張り、座り心地も少しずつ良くなります。

18世紀ロココの時代になって、ようやく体を包み込むような曲線をもち背や座面に詰め物をした座り心地の良い椅子が登場します。

近代〜現代

椅子四方山話 アールヌーボー

アールヌーボー

椅子四方山話 アールデコ

アールデコのソファ

フランス革命によって権威と切り離された椅子は、産業革命によって受注生産から大量生産へ、市民の生活用品へ、様式美から機能美へと移り変わっていきます。
新しい技術や新素材が開発され、手工芸の復興を目指したアーツ・アンド・クラフツ運動や、有機的な曲線を持つ様式を生み出したアールヌーボーなど、その後のデザインに大きな影響をもたらすさまざまな運動が各地で盛んになります。

腰を休めるものから空間を造りだす“デザイン”へ。優れた名作が次々と生み出されていきます。

モダンデザイン

椅子四方山話 トーネット:曲木のロッキングチェア

安価で手に入りやすいブナ材を使い、パーツを組み立てることで大量生産・大量輸送を可能にしたトーネットの曲木の家具。(1859-)

椅子四方山話 アントニオ・ガウディ

サグラダ・ファミリアの設計者として有名なアントニオ・ガウディの椅子。背や座面は掛け心地良く湾曲している。(1902)

椅子四方山話 マッキントッシュ:ラダーバックチェア

スコットランドの建築家マッキントッシュがデザインした椅子。出版人の別荘のベッドルームに置かれている。日本の造形に影響を受けたといわれている。(1902)

第1次世界大戦後、ドイツにデザイン教育のための学校としてバウハウスが設立されます。1933年には閉校しますがその影響は世界各地に広がり、国際的な視野がひろがっていきます。

トーマス・リートフェルトの赤と青の椅子。椅子は腰掛ける以外に、色や造形でインテリアデザインを生み出すことが出来ることを示した歴史的なデザイン。(1918)

椅子四方山話 リートフェルト:赤と青の椅子

バルセロナ万国博のためにミース・ファン・デル・ローエがデザインしたバルセロナチェア。革をキルティングした座面や接合部に段差のないX脚など細部まで美しい。(1929)

椅子四方山話 ミース・ファン・デル・ローエ:バルセロナチェア

フィンランドを代表的する建築家、アルヴァ・アアルトのアームチェア。成型合板の曲線を生かした椅子により、木材を量産家具の材料としてよみがえらせた。(1929)

椅子四方山話 アアルト:アームチェア

第2次世界大戦後、軍事用に開発された新素材や新技術を家具に応用し、成型合板やプラスチックなどを使った新しい家具がデザインされます。また座面の曲線が2次元から3次元になり、人間工学に基づいた椅子が作られるようになります。

彫刻家ハリー・ベルトイヤが、自らの手でワイヤーを曲げ感触を確かめながら、試行錯誤の末生み出したダイアモンドチェア。室内はもちろん屋外使用の定番。(1951)

椅子四方山話 ベルトイヤ:ダイアモンドチェア

アルネ・ヤコブセンの名作、セブンチェア。成型合板を3次元に曲げ加工した座と、細いスチールパイプ脚の組合せというシンプルな構成が美しい。(1955)

椅子四方山話 ヤコブセン:セブンチェア

PICK UP!

日本の椅子

椅子四方山話 柳宗理:バタフライスツール

バタフライスツール

椅子四方山話 新居猛:ニーチェア

ニーチェアX

日本最古の椅子は、弥生時代前期の丸太をくりぬいたものといわれています。また中国から伝来した胡床や武士が野戦用に使用した折りたたみ椅子などが椅子の起源と考えられます。 床座式の生活様式の中、椅子は椅子としてあまり発展しないまま明治を迎え、文明開化と共に西洋の文化として取り入れられます。

バタフライスツールは工業デザイナー柳宗理の代表作。機能的で美しく、量産が出来、適正な価格で多くの人に愛される。世界に認められた最初のジャパニーズデザインです。(1954)

「より多くの人に愛される、そしてより長い寿命を保てるデザイン」という考え方が色濃く反映された椅子、ニーチェア。発売当時は海外でたくさんのコピー商品が出回った、ニューヨーク近代美術館の永久コレクションです。(1970)

人間工学に基づいた椅子

椅子四方山話 ストッケ:バランスチェアバリアブル

バランスチェアバリアブル

椅子四方山話 ストッケ:トリップトラップ

トリップトラップ

ノルウェー、ストッケの椅子は暖かな木の温もりと快適な機能をあわせもっています。

バランスチェアは自分で自分のバランスを取りながら正しい姿勢を保てる椅子。
トリップトラップは簡単な調整で赤ちゃんから大人まで使うことが出来る椅子。子供が自然に正しい姿勢を保てるようにデザインされています。

椅子四方山話 アーロンチェア

アーロンチェア

人間工学の専門家、ビル・スタンプと人間工学に強いデザイナー、ドン・チャドウィックが、座る人のことを第一に考えて開発したアーロンチェア。世界で最も座り心地がよいといわれる、世界で最も有名なワークチェアです。

座る人の姿勢に連動して無理なくサポート。座や背は体圧を分散し、快適な座り心地で疲れにくい椅子です。体型に合わせて3サイズから選べるのも心憎い気配りです。

(2004年6月作成)

本文中に使用している家具・インテリアの写真はイメージです。当社にてお取扱いのない商品が含まれる場合がございます。また、掲載しました情報はコラム作成当時のものとなりますので予めご了承ください。

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